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意思主義と形式主義

売買契約のような場合、物の所有権が移転するためにはなにが必要であるか。すなわち物権変動の発生には何が必要なのか。日本では、契約による物権変動の効力は当事者の意思(合意)によって生じるとする(176条)。これを意志主義という。何らの形式を整えずとも、意志の合意で物権変動が生じるのである。ただし当事者に特約があった場合や他人物売買などの例外もある。

第176条(物権の設定及び移転)
物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。

これに対する概念は形式主義である。形式主義においては、物権の効力が生じるには当事者の意思に加えて、登記や引き渡しなどの形式を必要とする考え方で、ドイツの民法などで採用されている。

意志主義が当事者の意思を尊重するのに対し、形式主義は第三者からみた外形の状態を重視している。

物権行為と債権行為

意思表示について、契約における債権的な意思表示と、物権行為を発生させようとする物権的な意思表示は別個のものなのかという問題がある。

物権行為と債権行為は区別できるか(問題の所在)

他人の物の売買における売主の義務に関する民法560条には、「他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。」とある。 他人物を売買した場合、他人物の所有権が移転は否定されるが、「売買契約」の成立は肯定されるため、物権変動には物権行為と債権行為の2つの行為が含まれていると解することができる。

物権行為と債権行為

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Aの土地についてBが無権原にCに売り渡す。他人物売買である。

しかし当然、Aの所有権が移転するわけではなく、物権変動はおこらない。他方、他人物売買は債権的には有効なので、売主BにはAの所有権を取得して移転させなければなないという義務が発生する。

権利の変動をもたらし債務を負担する行為(債権行為)と、物権の変動をもたらす処分行為(物権行為)は区別できるのでは…?

物権行為の独自性否定説(判例・通説)
判例は物権行為に独自性はないとする物権行為の独自性否定説にたつ。すなわち、売買契約の締結によって債権債務が発生し所有権も移転するので、所有権のみを移転させる物権行為は必ずしも必要ではないとしている。
ただし、物権契約の独自性を完全に排除しているわけではない。抵当権の設定契約のような物権契約もあるし、また当事者の特約によって物権契約をすることも可能である。このように例外的に独自性を認める場合は、以下の「有因・無因」の問題も生じる。
物権行為の独自性肯定説
売買契約のような債権契約について、所有権の移転という物権変動を発生させるには常に独自の物権行為を必要とする考え方を物権行為の独自性肯定説という。この物権行為というのは、登記や引渡しがあったときに行われると解されるので、 結果的に形式主義と似た結果になる

物権行為の無因性・有因性

では、「物権行為の独自性肯定説」や独自性否定説において例外的に独自性が認められるような場合(つまり物権行為に独自性がある場合)、債権行為が何らかの原因で無効であった場合、物権行為はどうなるのか。

有因の関係とする考え方

債権行為と物権行為は関係があり、債権行為(売買契約等)が無効であると、 物権行為(所有権の移転)もはじめからなかったことになるとする

無因の関係とする考え方

債権行為の影響を物権行為も受ける。 よって、債権行為(売買契約)が無効であっても、物権行為(所有権移転)には影響はない。(売主が買主の所有物を取り戻すには、別途、不当利得返還請求の手続によらなければならない。)

物権変動の時期

以上のような考え方をふまえたうえで、契約による物権変動(所有権の移転など)はいつ生じるのか、という問題がある。契約をした時点なのか、それとも登記や引き渡しなど外形的な行為を終えた時点であるのか。

判例・通説の考え方

民法176条を素直に解釈し、物権変動は原則として契約の時点で生じるとするのが契約時移転説であり、判例の考え方である。ただし以下のような例外がある。

学説A

物権変動が生じるのは代金を支払ったとき、あるいは登記や引渡しの時点とする学説がある。根拠は上述の物権行為の独自性を肯定する立場、否定する立場によって分かれる。

物権行為の独自性肯定説から
民法176条にある「意思表示」とは、「物権」移転を目的とする特別の意思表示のことであり、この「物権的」意思表示は外形行為(登記や代金の支払など)の時点でなされたものと考えられる
物権行為の独自性否定説から
売買契約が有償であることに着目し、代金支払と所有権移転が同時履行に立つべきだとする(有償性説)

学説B:段階的所有権移転説

以上のように物権変動の時期(所有権の移転時期)を特定するのは不可能かつ不必要であるとする学説がある。よって物権がいつ変動するかについては、危険負担の移転時期や果実収取権の移転時期など具体的な規定によって判断される。

以上のように物権変動の時期をあえてある時点に決めなくても個別の規定や考え方で判断すればよいとするが、所有権の帰属が問題となる709条や物権的請求権の行使者はだれかという問題などが残る。



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